写経と蝉と斎座:八月の空心会報告

八月の空心会の例会風景
八月の空心会の例会風景

今月は年中行事の施餓鬼会などが初旬に重なり、写経「空心会」は8月18日午前10時から開催された。長期気象予報ではまだ暫くは不安定な天候が続きそうですが、当日は好天に恵まれ実に気持ちの良い一日でした。遠く砂子山の頂上から蝉時雨に溶け合って、麓の徳光院境内には早や寒蝉(法師蝉)の鳴き声が聴かれた。

本堂正面の観音菩薩に合掌、一礼して写経机に向かう。堂内は整理され、お香が焚かれ、一息いれるとそれだけで心が静まった。

和尚の合図の鐘で「般若心経」を一遍、続いて「懺悔文」を三遍唱え、合掌礼拝して写経に取りかかる。写経は仏の教えを体得するための修行でもある。身体、呼吸、そして心を調える事こそがその根本にある。心を込めて一心に、一点一画も疎かにせず写経する。心が癒され、自己治癒力もたかまる。写経という処を得てこそこんな爽快な気分と心の安定が生まれる。写経の第一に良いところだ。

何時か本堂前の松にとまった法師蝉が、写経の終わりを告げるかのように鳴き止んだ。写経の後に「延命十句観音経」「四苦誓願文」を夫々三遍唱えて合掌して浄書を終える。

つづいて出席者全員は書院に席を移し斎座に着いた。

斎座の食事の際には、「五観の偈」を唱えてから頂く。特に禅の修行においては、食事も大切な修行の一環であり、禅僧の食事作法である。写経の我々もこれに準じる。経文は難解で堅苦しいものと思いがちだが、食事五観文は親しみ易い偈文である。

斎座に供される精進料理が第二の良いところで、楽しみの一つでもある。「一汁一菜」の食膳は、禅寺で伝統的に守られてきた食事である。極めて質素なものだが、毎回季節感が込められて新鮮で目を見張る。本日の献立は、揚げ・椎茸・胡瓜などの具が入った冷素麺、茄子・苦瓜の鉄火味噌炒め、それに少量の天上寺製奈良漬の香の物、白飯であった。

さて最後に「結びの言葉」を全員で唱えて静かに退座した。

 

 皆様も是非「空心会」で写経を体験してみて下さい!

 

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