謹んで新年のお祝を申し上げ、皆様のご多幸の年となることを祈念申し上げます。
昨年は、6月の大阪北部地震に続き、7月の西日本豪雨12号台風、9月の台風21号、24号、さらに北海道地震により大きな被害を残しました。
被災された皆様には心よりお見舞いを申し上げます。
我々は大自然の脅威に対して無力であり、そして何事もなく生活を送れていることが本当に有難いことだということに気付かされます。
有難いとは本来仏教の言葉で、お釈迦様は仏説譬喩経(ぶっせつひゆきょう)の「盲亀浮木(もうきふぼく)のたとえ」で説かれています。ある日、阿難(あなん)尊者という弟子に、人が人間として生まれてくることは、「果てしなく広がる海の底に目の見えない亀がいる。その盲亀が百年に一度海面に顔を出す。その広い海には一本の丸太ん棒が浮いている。その丸太ん棒の真ん中には小さな穴がある。その丸太ん棒の穴に亀が海面に上がった拍子にひょいっと頭を入れることがあるとすれば、それ相当難しいことであり、それくらい有難いことである」と説かれました。
また、法句経において『いま生命(いのち)あるは有難し』として、阿難尊者に対し大地の土を爪の上に乗せ「大地の土と爪の上端における土、いずれが多いか」と問われました。阿難尊者は「大地の土の方がはるかに多いです」と。お釈迦様は、「そうだその通りだ。生きとし生けるものは、大地の土のごとく無量無数だけれど、人間として生を受けるということは,爪の上端における土のごとくごくごく稀である。この与えられたかけがえのない生命を一日一日大切にすること」を諭されました。
この受け難き「生命」、またすべての物質の「生命」もやがては滅します。この「生命」が今あることは本当に有難いことなのです。
年頭にあたり今一度、この「生命」が、ご先祖様からつなげて頂いた生命で、また色々な方々のお蔭様であることを意識し、日々すべての方々に、またすべての物質に「ありがとう」という感謝の意を表すことが、よりよく生きるために大切です。
災害だけでなく、物質、情報等々が溢れかえり、心の休まることのないこの時代に、心を休め、自分を見つめ、今生かされているこの生命を認識することが肝要です。
この『自分を見つめ、心を休める』には「座禅」が最適です。座禅は、姿勢を調え、呼吸を調え、そして心を調えていきます。短時間でも良いので座禅を続けることで充実した毎日になることでしょう。座禅は決して難しいものではありません。一日一度は座禅をして自己を見つめる機会をどうか作って下さい。
当院でも通年座禅会や写経会を行っています。皆様にもご参加いただき自分自身を見つめ直し、より良い日々をお送りいただきたいと存じます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
平成31年 元旦
徳光院住職
橋本元勝 合掌