年頭所感:『今』を生き抜く為に

謹んで新春の御祝を申し上げ、皆様のご多幸年なる事を祈念申し上げます。

昨年は新型コロナ禍が続き、またロシアがウクライナに侵攻し戦争が始まり、エネルギーの供給や穀物の輸送混乱等により世界的に不安な日々が続きました。

日本では夏頃から行動の制限が緩くなり、久しぶりに家族友人と再会できた方も多かった様子でした。

三年続くコロナ禍で不自由な生活を送る中、ふと徳川家康の言葉を思い出しました。

『人の人生は重い荷物を負うて遠き道を行くが如し、急ぐべからず。不自由を不自由と思えば不足無し。心にゆるみこらば困窮した時を思い出すべし。』

皆この不自由を苦と感じておられることでしょう。

お釈迦様はこの世は『苦』だと仰せられました。「一切皆苦』だと。

『一切皆苦』は四法印という仏教の最も大事な教えの一つで、お釈迦様はこの『一切皆苦』を具体的に八つにまとめ「四苦八苦」という言葉で表されています。

生病老死の四苦と愛別離苦(あいべつりく)・怨憎会苦(おんぞうえく)・求不得苦(ぐふとっく)・五陰盛苦(ごおんじょうく)を合わせて八苦。

我々はこの四苦八苦から避けられません。人生・世の中が自分の思い通りにならないことに悩むことで、お釈迦様はこの一切皆苦の原因は四法印の二番目『諸行無常』と三番目『諸法無我』であると説かれました。

 『諸行無常』とは、すべてのものは常に変化し永遠であるもの

  は存在しない 。

 『諸法無我』とは、すべてのもの事(諸法)は互いに影響し合い、 

  何一つとして単体で存在するものはない(無我)。実体はない。

各々が諸行無常と諸法無我というこの世の真理を受け入れ、全宇宙やご祖先様から与えられた『今』を精一杯生きていく。『今』苦になりきり一心不乱に生きていく。『今』を抜きにして昨日のことで悩んだり、明日への不安で悩んだりするのではなく、諸行無常、諸法無我を感じて『今』を精一杯生きることにより、また苦(この世)になりきることにより、不自由になりきることで救いがあると説かれているのです。

そして「四法印」の最後の教え『涅槃寂静』という苦しみのない安らかな悟りの境地(涅槃の境地)に到達できると説かれています。

不自由を苦と案じるのか否かは、徳川家康の言葉『不自由を不自由と思えば不自由無し』、つまり不自由になりきればということであり、苦(この世)になりきれば苦無しということではないでしょうか。

『今』を無心で受け入れ、急がず人生を精一杯無心で生きていくことが、この厳しき重い荷物を負う時代をより良く生きていく方法と言えるでしょう。

『今』をゆったりと無心に生きていくために、禅をおすすめしています。坐禅は決して難しいものではありません。姿勢を調え、呼吸を調え、心を調えていきます。短時間でも良いので坐禅を続けることで心穏やかな毎日になることでしょう。

当院では、通年坐禅会や写経会を行っています。

混沌とした現代社会の中でより良い生活を送るために是非ご参加頂きたいと存じます。

今年こそコロナ禍が収まり、戦争が終結することを節に祈ります。

本年もよろしくお願い申し上げます。

    令和五年 元旦

                 徳光院住職

                    橋本元勝 合掌  

 

 

 

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